きっかけは、あそび場プロデュースの張り紙
良質な玩具が充実していることも、親子がここを訪れる理由のひとつ。
永井さんをはじめ、16人のスタッフは全員、現役子育て中のママたち。保育や飲食の経験など、それぞれのキャリアを生かしつつ扶養の範囲内でワークシェアをしています。永井さんがこの子育てサロンをはじめたきっかけは、一枚の張り紙でした。
「私には10歳、9歳、4歳の子どもがいますが、いちばん下の子どもが生まれてから、上のふたりがのびのび遊べて私も安心して見守ることできるので、みなとみらいにあるボーネルンドのあそび場を利用していたんです。あるとき、下の子を連れておむつ替えスペースに行ったら、そこに『あそび場をプロデュースします』という張り紙があって。それを見たときに『これだ!』とひらめきました」
床やソファでくつろげるスペースと、パソコンなどの作業もできるカウンター席がある1階。カフェの食事やドリンクがたのしめるほか、飲食物の持ち込みもOK。
地元、横須賀には子ども連れで行けるお店が少ないことから、親子のための場所をつくりたいと思った永井さん。早速、張り紙にあった連絡先に電話をすると、ボーネルンドの営業担当者が自宅を訪ねて来ました。
「遠方なのにすぐに来てくれて、丁寧に私の思いを聞いてくれてありがたかったです。『いつか一緒に何かやろう』と話していた、子どもの幼稚園のママ友たちも、私があそび場とおかあさんたちのための場所をつくりたいと話したら、一緒にやりたいと言ってくれました。そして、ここは義父が数年前に購入した建物ですが、親子のあそび場をつくりたいと相談したら使用を快諾してくれたんです」
こうしてサロンづくりは着々と進みました。
クラウドファンディングで資金を集め
限られた空間でも、段差をつけたことでのぼり降りなどの身体を使ったあそびがたのしめる。
次の課題は、あそび場やカフェの設置とサロンの運営に必要な資金集め。
「地元の金融機関に資金を借りようとしたら難しくて。『玩具はお下がりでいいのでは』と言われました。でも、すぐに飽きてしまうようなものは置きたくなくて。ボーネルンドのあそび道具や遊具は確かに安くはありませんが、良質で孫の代まで遊べます。だから、譲れないと思いました」
永井さんたちは、クラウドファンディングをサポートする会社に依頼して、あそび場の資金集めをしました。
「目標は2ヶ月で100万円。それが13日間で集まったんです。お会いしたことのない方も寄付してくださって、みんなでうれし泣きしました。ファウンダーさんのお金で購入した遊具だと思って大事にしています」
おかあさんたちを支援する場所を
キッチンスペースは、ナチュラルで落ち着いた雰囲気。料理が得意なスタッフがメニューを考えている。
あそび場とカフェのプロデュースは、ボーネルンドに託しました。
「子どもが遊べるだけでなく、ママたちがほっとできる場所をつくりたかったんです。お茶を飲んでくつろぐことも、パソコンなどのちょっとした作業もできるスペースがほしかった。営業の方もデザイナーさんも、資金のことを心にとめながら、親身になって私たちの要望を叶えてくれました」
前職で就労支援の仕事をしていた永井さんは、おかあさんたちの自己実現のためのスタートアップも支援しています。
「みなさんヨガや手芸などいろいろな資格をもっているので、イベントをしてもらったり、会員登録いただいいる方は結のホームページで紹介したりして応援しています」
いつも来ても、飽きずに遊べる
遊具は可動式。滑り台から家などフレキシブルに形を変えられる。
「ここにあるあそび道具や遊具も決まった遊び方がないので、子どもたちは来るたびに、いろんな発見をして楽しんでいます。すべり台は組み立て式なので、その日に来た子どもに合わせていろいろな形に変えられるんです。飽きがこないように、とボーネルンドさんがこだわってくれました。家庭ではなかなかそろえられないあそび道具がたくさんあると、親ごさんたちもよろこんでくれますね」
永井さんたちは「結」を、0〜3歳くらいのちいさな子どものいるおかあさんたちの居場所にしたいと考えています。
「だから、お座りができるようになった頃の赤ちゃんが手をのばして遊べるような玩具も充実させていきたいと思っています」
お互いさまの精神で支え合う
隣の鴨居八幡神社の鳥居。浦賀湾が間近に広がり、のどかな空気が漂う。
「ここは決して便利な場所ではないですが、お互いさまの精神が残っている地域。私たちメンバーにもその精神が備わっています。利用者のなかには『何でもそろっている神施設』と言ってくださる方も(笑)。離乳食の温めもするし、哺乳瓶も洗ってあげるし、トレイに行くときは赤ちゃんを抱っこします」
結を横須賀市の子育て支援のサードプレイスにすることが、当面の目標です。
「ここがあるから、安心して楽しく子育てができると思ってもらえるよう、私たちも保育や接客のキャリアを積み重ねていきたいですね。そして、自分たちも結がやっているようなことをしたい、という方たちが出てきたら、よろこんでコンテンツの提供をしたいと思っています」
お話:mam&kids salon「結-Yui-」 代表永井由美さん。