あそびと自然で好奇心を刺激
園庭の遊具で元気に自由遊び
くりはら愛育保育園は2020年4月に、住宅街がひろがる足立区の栗原地域に開園しました。地域の保育へのニーズが年々高まるなか、園長の上原さんは独自性のある保育園の実現に向け、遊具や環境の整備を実施。「開園時、足立区では同時に他園が20園開園しました。これから5年10年でさらに少子化になり、保護者が園を選ぶ時代になっていきます。遊具を導入する際も、保育のねらいを明確にしたいと考えました。」
自然物を保育室でも観察
小規模保育や広い園庭など、近隣にはさまざまな特徴の園があるなか、くりはら愛育保育園が目指したのは「子どもが主体的に動いて活動できる環境づくり」でした。園内には自然豊かな環境があり、木々や四季の花、さまざまな生きものが園児たちの好奇心を刺激。築山やビオトープがある園庭と保育室とを、子どもたちは自由に行き来しながら日々活動をしています。
自然豊かな園庭と天然木の遊具
豊かな自然にあふれる園庭
園では『調和』を大きな理念として掲げ、子どもたちがあたまやこころ、からだを満遍なく育めることを大切にしています。園庭はまさにそのすべてを使いながら活動できる、理念を象徴する活動の場と捉え、「周囲を住宅街に囲われた環境の中でも、緑や木の温かみが存分に感じられる自然豊かな園庭」をコンセプトに整備が進められました。
園庭のシンボルとして、園舎にあうカラーリングを施したジクホルツ社の遊具を導入
そうした園の考えや想いを受けて、今回ボーネルンドが提案したのはドイツ・ジクホルツ社の木製遊具です。鉄製遊具や製材された木材を使った遊具と異なり、天然木の形状をそのまま活かした有機的なフォルムが自然豊かな園庭の雰囲気によくなじむことが選定の決め手となりました。「基本的に遊具は、木登りなどの『自然の中で体験するべきあそびの代替物』であると考えています。その点、ジクホルツの遊具は、園にはない自然の中でのダイナミックなあそびの機能を補っていると思いました。」
園庭を整備してわかったこと
ジクホルツ社の遊具でのびのびと遊ぶ子どもたち
園庭整備設置当初は、外に出てもなかなか遊べない子どもたちも見受けられたといいます。住宅街で暮らす子どもたちにとって、自分の手の届く自然が広がる環境はとても新鮮だったのかもしれません。どう遊んでいいのかわからず、動きに多様性がなく、これまでこの園庭のような場所での自由遊びをあまり経験したことがない様子でした。
遊び疲れて遊具の中でひと休み
しかし、しばらくすると解放されたように遊び始めた姿が印象に残っているといいます。「園に通う中で、子どもたちにあそびを見つけようとする気持ちが芽生え、自由に楽しくやりたいことができるようになりました。思いきり駆け回るだけではなく、日によっては園庭のはじに座って休むなど、思い思いにすごしています。」
コーナー保育が実践される保育室
明るい日差しが注ぎ込む保育室
屋内の各保育室には、木のぬくもりが感じられるドイツ・ベカ社のリガールが導入されました。壁を立てる代わりに家具で間仕切りを行い、子どもたちがそれぞれ体験したいあそびを楽しめる「コーナー保育」を実践しています。ぬり絵や積み木、ままごとなど子ども一人ひとりのあそびの欲求に応える場を用意することで、その日その時の自分の居場所を選べる環境づくりを行っています。
リガールの柱は、各クラスのシンボルカラーに合わせてカスタマイズしている
リガールは個々のあそびや活動に集中できる空間を生み出す一方、背板が空間を完全には遮断しないので、各ゾーンが閉鎖的になりすぎず、子どもも保育士もコミュニケーションをとりやすい環境をつくることができます。「シンプルで空間を区切りやすく、使い勝手が良いです。高い部分は大人目線で作品を飾って部屋の雰囲気作りに使用し、低い部分は子どもたちが遊具を手にとりやすい収納棚として使え、非常に機能的です。(空間が仕切られてコーナーができるので)何も置いていない部屋に比べて、部屋に奥行き感がでると感じています。」
リガールはプレイテーブルや読み聞かせの舞台としても活用できる
保育室では、年齢にあわせてあそび道具や環境も変化をさせて活用しています。同じままごと遊びでも4歳・5歳の部屋にはキッチン以外にもマーケットを用意するなど、遊具の種類を増やし、あそびの幅が広がるように工夫をしています。年度ごとに入学してくる子どもたちの個性はみな異なり、求めるあそびはさまざま。同じ年齢のクラスでも環境設定は基本部分のみ行い、職員が子どもの特性を見ながら、その年に必要な遊具を都度用意するようにしています。
空間の中で、それぞれがやりたいあそびを見つけて体験
保育室には、自由に使えるさまざまな素材と既製品の遊具の両方を用意しています。「天然素材や廃材など多くの素材に触れ、自由で無限の想像力を育む時間を大切にしています。ボーネルンドの遊具は年齢・発達ごとに構成されていて、それぞれの遊具の機能やコンセプト、ねらいが明確です。子どもの育ちやその時の状況、気分や要望に合わせてどちらも使用しながら、環境設定しています。」
園庭や環境の整備をすすめていく中で、大切にしたこと
今回お話を伺った上原さん
上原さんは、子どもたちがのびのびと成長している環境として、地域の大人の方やこれから子育てをされる皆さんにもっと保育園のことを知っていただきたいと考えています。「常に『子どものために』『チルドレンファースト』という言葉を念頭に置き、園庭の環境や保育室の環境を構成しました。また地域の子育ての拠点としての在り方も模索し、限りあるスペースの中で子育て支援室も整備しています。地域の大人の皆さんに『子どもがこんなところで育って欲しいな』と思ってもらえる保育園、また一方通行ではなく、地域の方と相互に作り上げる園を目指していきたいと思っています。」
PHOTOS by AYUMI NAKANISHI
※投稿内容は2021年6月取材時の情報です