遊んで育つ。それを叶えるあそび場
ママの声を受け、まずイベント開催
2011年3月に起きた東日本大震災の被災地の中でも、放射線の影響が大きかった福島県。「外で遊べないのなら室内で」というママや先生方の切実な訴えを受け、ボーネルンドはそれに応える活動を実施。 今では子育てに欠かせない市の施設となって運営されています。
震災直後、特に郡山の子どもたちは当初、食事やあそびなど、生活のあらゆる場面で制約をうけていました。2011年5月、福島のお母様方から「公園は鎮まりかえり、子どもはみんな家の中で過ごし、窮屈な思いをしています。「どうか福島にもキドキドを」という切実なメールを複数いただきました。
郡山の小児科の先生からは「放射線への不安から、子どもたちは外遊びができず、ストレスがたまって喧嘩が増え、運動不足になるなど心身の成長に懸念を感じる」、また、幼稚園や保育園の園長からは、「外遊びの時間は15分に制限されており、充分に外で遊ばせることができないのが実情。
体力や集中力が落ちていて、子どもたちの20年後が心配だ」というお話をうかがいました。
一刻も早くアクションを起こす必要があると考えたボーネルンドは、震災2カ月後の5月には、あそびを通した応援活動の一歩を踏み出すことになりました。
郡山市、教育委員会、医師会で組織された「郡山市震災後こどもの心ケアプロジェクト」と連携して「夏のキッズフェスタ」の開催にこぎつけ、3日間限定ではあるものの室内あそび場を提供することになったのです。2011年8月26日から3日間、郡山駅近くの市営施設に500uのあそび場をつくり、プレイリーダーも常駐。
期間中は1600人もの子どもたちが5カ月ぶりに思い切り汗を流して遊びました。郡山市、子育て中の親、医師会、ボーネルンドの願いが一つになった瞬間でした。
この成功が、さらなる一歩につながりました。「夏のキッズフェスタ」の様子を知って、福島県を中心にスーパーマーケットを展開するヨークベニマル社が、常設のあそび場づくりのために、空き店舗と資金提供を申し出てくれたのです。
こうして、2011年9月、郡山市、心のケアプロジェクト、ヨークベニマル、ボーネルンドが協力して「子どもたちにクリスマスプレゼントを!」をスローガンに、室内あそび場を含む本格的な親子向け複合施設「ペップキッズこおりやま」のプロジェクトがはじまりました。準備期間はわずか3カ月、まずは除染からです。
本来なら外で体験するあそびを屋内でできるよう、ボーネルンドでは「キドキド」のノウハウを全面的に生かし、水と砂の両方で泥んこになって遊べる巨大な砂場、乗り物遊びのサーキット、思い切りまっすぐ走れるランニングトラックなど、ペップだけの多彩なしかけを随所に盛り込みました。
地域への誇りを失って欲しくないと考えて、環境は福島の自然をテーマにデザイン。桜が咲く春から実りの秋までを壁面の絵で表現し、子どもたちが福島の自然を感じ愛着を深められるように工夫を施しました。震災から7年が経った2018年4月には累計入場者数200万人を突破。
外で遊べるようになった今でも、子育てに欠かせない市の施設として運営され、多くの子どもの健やかな成長に役立っています。