子どもの育ちを考えようD Children’s Development & Growth

今こそもっとあそびを!
新しい生活様式で大人が考えるべき環境とあそび
(#2 小児科医 菊池信太郎先生 後半)

今後も続くことが予想される「制限付き」の生活。
今、そしてこれからの子どもたちの発達のために、家庭や教育・保育の場など日々の生活のなかで大人がするべきことを専門家の先生にお伺いしました。
前回に引き続き、今回も小児科医の菊池信太郎先生にうかがったお話をご紹介します。
今回は、「今だからこそ取り入れるべきあそびとかかわり方」です。

運動不足の子どもたちに必要なあそび

自粛期間の運動不足は、今後あそびの機会を増やしていくことで十分取り戻すことはできると思います。
大切なのは、とにかく「面白く」、「楽しく」、体を使って遊ぶことです。

うるさくしても良い場所、思いっきり体を動かしてもいい場所を用意する。そういう場所・時間・機会を用意してあげることで、子どもたちはからだを動かすことができます。
文部科学省は、1日に必要な運動量を確保するために60分のたっぷり遊べる時間を推奨しています。

感染を防ぐために大人がすべきこと

そして、これらの子どもたちのあそびの環境と安全性を確保するのは大人の役割です。
昔と違い、子どもは用意された環境でしか遊ぶことが出来なくなってきました。
交通や犯罪の危険がない安全な場所で、大人が見ている安心な場所で、かつ子どもたちがのびのびと遊べる場所を用意しなくてはなりません。

群れて遊ぶことは子どもにとって不可欠ですが、コロナ禍では人と人とが接触する場所はどこで、どうしたら感染予防になるのかを示してあげること。
遊びに来る子どもたちの体調が良いことを確認し、手洗いやうがい、マスクなど十分な感染症対策をした上で遊ぶように気を配ってください。3歳以下の子どもはマスクをすることが難しいと思いますが、大人は必ずマスクをするようにしましょう。
感染を予防しつつ、いかに子どもの遊びを保障するか、とても難しい課題を突きつけられています。しかし、私たちは決して大人の都合で子どもの遊ぶ環境を奪ってはいけないということを肝に銘じなくてはなりません。

ストレスフルな心のケア

もう一つ大切にしたいのが、お父さんやお母さんの精神的なケアです。子どもの心は大人の心を映す鏡だとも言われるくらい、大人の精神状態と子どもの精神状態はリンクしています。
近くにいる大人がいつもイライラしていたり、神経質になっていたりすれば、それは子どもの心に影響し、やがて、子どもの体に変化として現れます。
よく、「子どもを一日中ガミガミ怒ってしまった」というケースや、「子どもがゲームばかりしてイライラする」なんていう親御さんのお話を聞きます。
子どもが親の言うことを聞きたくなかったり、ゲーム等に没頭してしまったりするのには、何かの理由があるのかも知れません。もしかしたらなかなか言えない事情があるのかも知れない、と思って接してみることも大切かも知れません。
日頃から親子の会話をなるべくできるような場や機会を設けたいものですね。

一方で、大人もいろいろなストレスや不安を貯めやすい状況です。
自分一人で抱え込まず、誰かにちょっとでも話してみるのもよいでしょう。最近、受診にこられるお母さんによく見られる様子は、一人で色々な不安をかかえたまま、解消されないでいるということです。
これまではちょっとした子どものイベントや集まる場があって、そういった所でのちょっとした会話で救われていたのかも知れませんが、コロナ禍ではなかなかそうした場がありません。
診察中での私やスタッフの会話で、ポロッと日頃の不安を吐露して思わず涙汲まれる姿を沢山みました。なんらかそういったことを語れる場を積極的に作っていこうと思っています。

あそびで工夫する子どもとのかかわり

そして、子どもたちにいつもと異なる変化があったときは、そのSOSのサインを見逃さないことが何よりも大切です。
普段よりも一緒に過ごす時間をとったり、何気ない話題から話を広げていつも以上に会話をしたり、外を散歩してみるなど、子どもとのかかわり方に工夫をしてみることも必要ではないかと思います。

長期間の外出自粛や感染を抑えるための措置として、子ども同士の関わり合いの場は極端に減ってしまいました。
学校や園もきまりが多く、先生も子どもたちも疲弊しています。真面目に約束を守って過ごしている子どもほど、自分を制限してしまい、不安になっている様子がうかがえます。
「何か悩みがあるんでしょう?困ったことがあるんでしょう?はい、話して!」では、絶対に子どもは心を開きません。日頃のやり取りや関係性があって、はじめて子どもも心を許し安心します。失われたコミュニケーションによるストレスは今後も心配です。

しばらくは、大人も子どもも、この「制限付き」の生活を続けなければいけません。
「ダメ」「やってはいけない」という禁止や否定の言葉が多い中、私たち大人が考えなければいけないのは、安全を担保しながらいかに子どもたちのあそびとその環境を整えるかです。
どういうあそびが安全で、何が大丈夫かを見極めながら、子どもたちのあそびと環境づくりについてしっかりと考えていくことが必要だと思います。

今こそもっとあそびを!新しい生活様式での教育と保育

ページトップへ