子どもの育ちを考えようD Children’s Development & Growth
今こそもっとあそびを!
新しい生活様式で大人が考えるべき環境とあそび
(#2 小児科医 菊池信太郎先生 前半)
今後も続くことが予想される「制限付き」の生活。
今、そしてこれからの子どもたちの発達のために、家庭や教育・保育の場など日々の生活のなかで大人がするべきことを専門家の先生にお伺いしました。
今回は、小児科医の菊池信太郎先生にうかがったお話をご紹介します。
「人が危ない」環境での生活
東日本大震災の後、私たちは子どもが安全に遊べる「場所」を確保するため、屋内のあそび場づくりに奔走しました。
今回のコロナ禍においては、外にはなるべく出てないで家の中で過ごす・遊ぶということは、震災の時と同様ですが、放射線ではなく、「人が危ない」。
環境だけを気にすればいいわけではなく、他人と接触をしないことを求められますから、家族などの限られた人と長い期間、家という狭い空間で過ごさなければなりません。
震災の時は、外遊びは制限されていましたが、学校や幼稚園など日常生活のサイクルを回せれば普通でしたし、安全な環境であれば子どもはくっついて群れて遊ぶことができました。
ただ今回は、家の中からも出かけにくい、他の子どもと遊びにくい。
子どもたちの生活リズムは崩れ、じっとしていることを強られています。
子どもたちのからだへの影響
当然、運動量も激減し、一日に数百歩ほどしか歩いていないという子もいるようです。
幼稚園や学校があったときには当たり前にしていた「朝早く起きて、ご飯を食べる」という、基本的な生活習慣さえも崩れてしまったご家庭も多く見受けられました。
これは、「運動不足」以前の深刻な問題です。
基本的な生活習慣が乱れ、思いっきり運動できない数か月間の自粛していた期間が子どもの発達に与える影響は大きく、元気がない子、疲れている子も目立ちます。
今後も更に心身の変調が現れるのではないかと心配しています。
大切なのは、家庭では家族でリズムをとること。
大人もテレワークや生活環境が変わる方も多いと思いますが、学校が休みの間も、いつも過ごしている内容に近い時間割を作って守るなど、毎日の生活のリズムづくりが大切です。
例えば、何時に起きて、何時に朝ごはんを食べて…何時に夕ご飯を食べて、何時には寝る、といった毎日の事柄の時間を決めて、そしてお休みの日にも同じように過ごすことが大事です。
お休みだから、朝はゆっくりだから…とついつい寝坊してしまうと、その日のリズムは崩れ翌日にも影響していきます。
自分の体を守ること
体への影響は、運動不足や生活リズムの崩れによる肥満だけではありません。震災の頃と比べて、子どもがネット環境やゲームなどのデジタル機器に触れる時間も長くなりました。
ネットやゲーム中毒や姿勢の悪さ、視力の低下、肩こりなど、子どもたちの心や身体に過去にはなかった新たな影響が出てきています。
これからの一生を送る体の土台を育んでいる成長段階の子どもたちに、いかに自分の体の調子を整え、成長を阻害しないよう、「守るべき健康」を伝えることが重要だと感じています。
次回のコラムでは菊池先生にうかがった、「今だからこそ取り入れるべきあそびとかかわり方」をご紹介します。