地域の変化に合わせて
次々と倒れていく動きが楽しい「ウォールトイ」をくり返し楽しむ親子
神奈川県・藤沢市にある県立辻堂海浜公園は、湘南の海に沿って広がる19.9haの面積をもつ大きな公園です。施設内には広々とした芝生広場やジャンボプール、ゴーカートなど、ファミリーで楽しめるさまざまなアクティビティが揃っています。「外遊び」は子どもにとって最高のあそびですが、日本の公園は海外に比べると、乳幼児が遊びやすい屋外遊具や環境の導入がまだまだ少ないのが実態です。小さな子どものための環境整備は、公園が抱える全国的な課題であるとボーネルンドは考えています。県立辻堂海浜公園の周辺地域は、若いファミリー層が増加し、乳幼児を含む親子連れが、立ち寄りやすく遊びやすい環境が必要とされていました。そのような中で、辻堂海浜公園内の一角にある「交通展示館」のリニューアルが計画されました。
限られたスペースを最大限に活用
乳幼児のあそび場に欠かせない、大きなボールを転がすクーゲルバーン
「交通展示館」は生活に欠かせない「交通」について、子どもが模型や体験型の展示を通じて知ることができる施設です。建物自体の老朽化により、今後の施設の役割と機能の補強を考えていたなか、計画されたのが「小さな子どもをもつ親子が日常的に気軽に、また天候にも左右されず集える室内あそび場」の設置です。公園の担当者の方が、近隣の商業施設にある室内あそび場「キドキド」をご覧になったことがきっかけで、ボーネルンドにご相談をいただきました。既存施設の一角の57uという、限りのあるスペースにどのように充実したあそび場をプランニングするかが課題でしたが、もともと大きな子どもたち向けには存分に遊べる屋外環境があったため、室内はあえて対象年齢を未就学児に絞り、限られたスペースの中でもあそびのバリエーションの確保と親子の居心地の良さを実現することができました。
この場所らしさをつくる遊具
列車から見る車窓の景色を想像しながら、ジオラマ遊びを楽しみます
「交通展示館」内のあそび場にふさわしいシンボルとして、あそび場中央にはオリジナルの巨大ジオラマテーブルを設置しました。世界を俯瞰しながら楽しむジオラマ遊びは、観察したことを、道具を使って表現するあそびです。豊富な種類のミニカーや列車の遊具が並ぶ様子は、迫力満点。アップダウンのある立体的なコースや駐車場などのしかけが、子どもの想像の世界を広げます。繰り返しのあそびに最適な「クーゲルバーン(木製玉転がし)」や、指先遊びが楽しめる「ルーピング」など小さな子どもが自然と遊びこめる遊具から、壁面を使ってダイナミックにブロック遊びができる「プレイウォール」まで多種多様な遊具を設置。日々成長する子どもたちが日常的に来場することを想定し、発達段階ごとにさまざまなあそびを見つけて、それぞれじっくり取り組める環境設計となっています。
魅力ある公園であり続けるために
複数人で一緒に遊びを楽しめ、指先遊びを楽しめるルーピング
まだ一緒に遠出をすることが難しい小さな子どもをもつ親子には、毎日の生活の中で気軽に利用でき、同じような月齢の子どもを持つ親子と交流できる場が求められています。大きな公園の一角にできたこのあそび場は、オープンから徐々にママ友同士の口コミで話題となり、今では多くの親子が訪れる場所になりました。あそび場の壁面には、公園のシンボルモニュメントの「サザンセイル」や、間近に広がる湘南の海、のびのびと育った木々、力強い太陽などこの地域の大らかで美しい風景が描かれており、「今ここに通う子どもたちが大きくなったら、今度は外で家族や友達と、思いきり遊んでほしい」という願いが込められています。いつでも変わらずに利用できる、毎日の暮らしの拠りどころでありながら、地域の変化やニーズに合わせて変化をしていく公園の新しい事例です。