豊かなあそび環境とは?F What’s the Excellent Playground?
回る・揺れるあそびを体験する「感覚運動」
<第1回子どもの発達とあそび学びラボ研究レポート>
「豊かなあそび環境とは?」のコラムでは、あそび環境づくりを考える際のヒントになるような提案や事例をご紹介します。今回は、ワークショップイベントで参加者の皆さんと研究をした、「感覚運動」の教材(あそび道具)についてご紹介します。
ボーネルンドでは、発達の専門家である星山麻木先生とボーネルンド、参加者の皆さんで「あそび」を研究する新しいプログラム「子どもの発達とあそび学びラボ」を2023年秋にスタートしました。
あそびを研究するワークショップ
このプログラムでは、社会に「豊かな学びとあそびの場」を創造していくために、教育や保育現場、コミュニティの場における悩みや課題を参加者皆で共有しながら、教材の活用方法や子どもたちとのかかわり方をグループワークで研究していきます。
第1回は、神奈川県のマークイズみなとみらい店のキドキドで、回る・揺れるあそびを体験する「感覚運動」について考えました。
最初に世界各国の公園やチルドレンミュージアム、教育現場の写真を皆さんと一緒に見ながら、多様な子どもたちが過ごす環境について考えます。
お話を聞いた後は、はじめてお会いする方同士3〜4名で1グループになり、教材を使用して体験できるあそびや活用方法を考えるワークショップを行います。今回は、幼稚園や保育園の先生や自治体の職員の方、発達支援施設や教育施設に勤務されていらっしゃる方など、さまざまな職業の皆様がご参加くださいました。
しわくちゃになるボールで行う、内発的動機づけ
最初に使用した教材は、「しわくちゃボール」です。触るとしわくちゃになるボールを活用したあそび方を皆で考えます。
ぎゅっとつぶすと、中の空気が抜けてぺちゃんこになる特徴を利用し、
- みんなでつぶして誰がいちばんゆっくり戻るか「ゆっくり戻る競争」をする
- つぶした空気で他のボールを進めるレース
- ボールの上にバランスを取りながら立ってみる
など、さまざまなあそび方を試していきます。
このボールをつぶす動作は、手指の動きの練習になります。やらなくてはならない訓練とは異なり、楽しいあそびは「支援が必要な子どもたちにとって、くり返し行いたくなる『内発的動機づけ』に活用できそう」という発見もありました。
運動遊具で空間認知やプロセスエデュケーションをサポート
次に使用した教材は、動物の形をした「ボブルス」です。乗り方や動かし方によって、からだの発達に必要なさまざまな「動き」を引き出す教具です。
まずはボブルスを積む・上に立って揺れるなどの動きを試しました。
その後、異なる形の種類を使用したり、別の教材と組み合わせたりして使用することも試します。サカナのような丸いボブルスのフォームを転がして、アーチ状になっているアリクイのフォームにくぐらせるあそびや、しわくちゃボールを乗せてゆらゆら動かすあそびを考えたチームもありました。
これらのあそびを体験しながら、運動遊びで子どもたちの成長をサポートするポイントを発見していきます。穴に通すあそびは空間認知の発達を促すことにつながり、何度も繰り返すあそびが失敗を乗り越えながら、試行錯誤して繰り返す「プロセスエデュケーション」につながることを学びました。
回転遊具がかなえる協調運動と抗重力運動
最後に研究したのは、大きな筒状の遊具「サイバーホイール」です。
大きなサイズですが、透明なので中に入ると圧迫感がなく安心します。
横やタテにして皆であそびを考えていきます。
実際に中に入り、手足を使って進む協調運動(コーディネーション)や、ダイナミックにからだが動かす抗重力運動を体験しました。
かつては自然の中で子どもたちがたくさん体験していた協調運動や、公園の回転遊具で体験できていた抗重力運動は、最近では日常的に体験できる環境も少なくなってきています。教材を使用しながら、どうやって大人が工夫しながら、あそび場や学びの場にこうした動きを体験できる機会をつくっていけるかを皆で考えました。
今回は第1回のレポートで、感覚運動の教材とその道具で実現できる子どもたちのサポートを紹介しました。次回のあそび学びラボは、ごっこ遊びやコミュニケーション遊びをテーマに、2024年2月10日(土)に同じくマークイズみなとみらい店で開催予定です。
ワークショップの研究で生み出したあそびが一人でも多くの子どもたちに届けられるよう、これからも研究員の皆さんと一緒に、社会の中でのあそび体験の場づくりやその方法について考えていきます。