豊かなあそび環境とは?@ What’s the Excellent Playground?
体サイズのブロックでつくるダイナミックな集団遊び
〜イマジネーション・プレイグラウンド実践事例〜
「豊かなあそび環境とは?」のコラムでは、あそび環境づくりを考える際のヒントになるような提案や事例をご紹介します。
今回は体サイズのブロックで実現する、ダイナミックな集団遊びの場づくりのご紹介です。
集団遊びと遊具
家庭とは異なる「集団」でのあそびが生まれる、園でのあそび。
集団遊びは、成長の中で自分という「個」を認識する上で非常に大きな意味を持ちますが、家族構成や住環境の変化からその体験は減っていると言われます。園でこそ、体験させてあげたいあそびですよね。その際に、「どんな遊具を展開すればあそびが深まるのか」は、遊具の特徴を把握して具体的なあそびをイメージしないとならないため、環境をつくる側としては悩みもあるもの。
多様な集団遊びを生み出す「イマジネーション・プレイグラウンド」
東京都・板橋区にあるしらさぎ保育園は、遊戯室に「イマジネーション・プレイグラウンド」を導入しました。
イマジネーション・プレイグラウンドは昔の「ガレキあそび」をヒントに、アメリカで開発された遊具です。その場にある材料を使い、即興的になんでも創り上げてしまう楽しい時間を、安全かつ頑丈なポリエチレン・フォームの大型ブロックによって楽しめます。
今回、園長先生から「子どもたちは遊んでくれているものの、私たち大人が遊具をちゃんと使いこなせているかわからない」というご相談をいただき、ボーネルンドのプレイリーダー※とともにあそびの時間のお手伝いに伺いました。
- プレイリーダー…
ボーネルンドのあそび場であそびをお届け・提案する、専門的な研修を受けたスタッフ。
子どもが自発的に楽しめる環境設定を行い、あそびが生まれるきっかけをつくる“あそびのプロ”です。
準備で充実する、あそびはじめ
実際に行ったあそびの時間をご紹介します。
まずは、子どもたちが来る前にちょっとしたしかけ(サンプル)をつくります。部屋の中に入った瞬間に目に飛び込んでくる「あそびのきっかけ」を用意し、遊びたくなる雰囲気をつくります。
今回のあそびの時間には、5歳児24名が参加します。
子どもたちの様子を把握するため、まずは普段通りのあそびの時間を始めます。
最初に設置していたロボットが印象的だったのか、あらかじめ用意していた「しかけ」の再現がスタート。ひとりでつくることが難しい大きな作品にしていたため、自然と何人かで協力しながら組み立て遊びを行いました。
大人も加わって行う、きっかけづくりや進行
次に、大人(プレイリーダー)が一緒に入って遊びます。
いろいろなかたちのピースがある特徴を活かして、見立て遊びを始めてみると、
カメラマンや電車ごっこと、発想次第であそびが広がりました。
子どもたちひとり一人の個性やアイデアがかたちになり、他の子どもたちの創作意欲をさらに掻き立てます。
想像遊びの次は、からだ遊び。場にあるブロックをコース上に並べて、平均台のように渡るバランス遊びを行います。
前の人をまねしながら、難しい動きにも慎重にチャレンジ。
次は、みんなで一緒に「大きな作品づくり」。テーマは「おうち」です。
実際に中に入ることができるサイズの家をつくることができるのは、等身大のブロックならでは。
何気なくブロックを一カ所に集めているように見えますが、次のあそびを行うためのスペースの確保を同時に行っています。
遊具を組み合わせて、さらにワクワクする展開に
広がったスペースで、エアマットと組み合わせたあそびを行います。
「エアトラック・ファクトリー」社のエアマットの上に、ブロックでつくったハードルを設置。反発力のあるマットと柔らかいブロックを使うことで、運動が苦手な子も失敗しても楽しい!からだ遊びの場をつくります。
あそびのフィナーレには、園にあったパラシュートを組み合わせました。
みんなでつくったお家に屋根がつきました!
最後は「かたちさがし」。同じ種類のブロックを見つけて、かたちごとに重ねます。後片付けまで、楽しいあそびとなりました。
自発的なあそびを促す、貴重な集団遊びの場
今回の集団遊びの場では、イマジネーション・プレイグラウンドの特長である、
・子どものからだサイズの「スケール感」
・シンプルなデザインによる「汎用性」
・安全かつ遊びやすい「素材感」
を活かして、家庭ではできない園ならではのダイナミックな展開を意識した活動を行いました。
最後に先生方と行った振り返りでは
「こう遊ぶ」という決まった遊び方ではなく、子どもたちの発想次第で想像遊びやからだ遊び等さまざまなあそびにもつなげていけることを再認識しました。
新しい生活様式の中にあってはさらに貴重な体験となってしまった集団遊び。
いつもの遊具でも、他の遊具と組み合わせたり、あそびのきっかけづくりを工夫してみたりすることで、新しいあそびが生まれるかもしれません。
同じ場で同じ道具を使いながらも一人ひとりの自発的なあそびを促す、「あそびの価値」に溢れる場づくりを始めてみませんか?