子どもの育ちを考えよう@ Children’s Development & Growth
三輪車で育てるからだとこころについて
子どもの成長について考えるこちらのコラムでは、
毎回国内外における「子どもの成長にとって大切なこと」を取り上げ、ご紹介します。
今回のテーマは「三輪車」です。
かつては子どもがいる日本の家庭の乗用遊具といえば
三輪車が一般的でした。
お庭や公園で乗車する子どもを見かけることが多かった三輪車ですが
近年、住環境や生活スタイルが変わるにつれて
大人が持ち運びしやすい押し手ハンドル付きの三輪車や
保管スペースが最小限である二輪車、
長く使うことを想定した自転車を幼いうちから選ぶ家庭も多くなりました。
「三輪車を自分の力で思いきり漕いで遊べる場所は、
保育園や幼稚園のみ」という子どもたちも少なくありません。
今回は、幼児期の保育・教育現場での乗用遊具「三輪車」の役割について考えたいと思います。
からだを育む三輪車
三輪車は、安定して乗ることができる構造から
「自転車が乗ることができない、幼い子どもが乗るもの」と考えられがちです。
しかし、チェーンの力を借りて少ない力でも前に進むことができる「自転車」と異なり、
自分の力で漕がないと前に進まないため、漕いで遊びながら、歩くために必要な脚力の発達を促します。
また、座ってハンドルをしっかり握る姿勢は、腕や背筋の使用・バランス感覚や体感の発育を促し、
漕ぎながら進みたい方向にハンドルを切る動作は、目と手の協応動作にもつながります。
ちょうど歩き始めの赤ちゃんを卒業した、からだ作りための活動を始める時期には、
三輪車は必要不可欠なあそび道具であるといえるでしょう。
※目と手の協応動作
目で見たものに対して、正確に手や指を動かせること。
細かいものを思ったとおりの場所に置く、めがけた場所にボールを投げ入れる、
まっすぐに走れるなどの運動能力は、目と手を使ったあそびに集中するなかで徐々に養われていくといわれています。
集団使用にぴったりの三輪車の素材
次に、集団で使う場合を考えてみましょう。
家庭では「乗れるようになってから買う」三輪車ですが、
保育現場や教育現場では、
常に置いてあり、子どもたちが乗りたくなった時にいつでも乗ることができる
環境を整えておいてあげることが重要です。
また、使用する三輪車も個人向けのものとは異なり、
はじめての子どもも安心して遊べる抜群の安全性と
何年も使用し続けることができる耐久性が要求されます。
プラスチック製など壊れやすく、使い捨て前提のものではなく、
スチール製など頑丈な素材のもの・修理ができるものであれば
壊れた部分・古くなった部分を取り替えながら
長年使い続けることができ、
「私たちの大事なあそび道具」として扱い、
ものを大切に管理する気持ちも育まれます。
心も育む乗用遊具のあそび
三輪車は、全身を使った運動ができる一方、心を育む遊具でもあります。
大人の力を借りず、自分の力で漕ぐと、達成感や自信を感じることができます。
また、皆で追いかけっこをしながら一列になって進む、競争をして力試しをする、
ごっこ遊びの中で運転手役になって参加するなど、集団で遊ぶことにより、
コミュニケーションや心の発達を促す遊具としても活用できるでしょう。
環境に合わせて選ぶ三輪車
三輪車の中には、シンプルなタイプから、複数人で同時に乗れるタクシータイプや荷台付きなど
さまざまな種類があります。
保育現場や教育現場、あそび場では、
遊ぶ子どもたちの年齢や人数、遊べる場所(コース)の形状に合わせて、
必要な種類・台数を配置することで、発達に合わせたあそびや集団遊びを促すことができます。
身近な場所で三輪車に触れることができる機会が増え、
たくさんの子どもたちのこころとからだが育まれるきっかけとなる環境が広がりますように。